彫刻
羊毛、発泡スチロール、ワイヤー、テグス
可変
これから大学を卒業し、大人として社会に踏み出すその前に、母親に言えなかった自分自身のことを伝えるため本作は作られた。
本作の制作過程において、作者は母親に協力を仰ぎ材料集めを行った。積極的に母親と関わることは、作者にとって、とても勇気がいることだった。
本作は、羊毛から丹念にフェルトを自作し、そのフェルトで芯材を覆って繭を制作している。赤い模様が入った大きい繭は作者自身を、その周りに配された無数の繭は他者を表している。それらの中には緑模様の繭が一つだけ混ざっており、それは作者の母親を象徴している。
作成した複数の繭をワイヤーや糸で吊るし、空中を漂うインスタレーションとして仕上げている。それにより、作者と他者、作者と母との関わりとその距離感を丁寧に表現した。このような大規模なインスタレーションを高いクオリティで実現した点は大きく評価できる。
ただ、何よりも、自らが前に進むため、本作制作を機に起こした勇気を私は高く評価したい。