学校法人トキワ松学園 横浜美術大学 Graduation Exhibition Archives 卒業制作アーカイブ

クラフト

榮倉 早紀Eikura, Saki

2021優秀賞
濡烏

漆芸

100×40×40cm×7点

教員コメント太田 正明 助教

漆は塗っては研いでの繰り返しの作業工程により平滑で艶のある塗膜が形成されていきます。一回の漆の塗膜の厚みは0.05ミリ程度で髪の毛よりも薄く塗り重ねなければうまく固まることができません。漆を研ぎ出すときに一番上に塗った層を研ぎすぎて下層の漆が表面に出てくることを「研ぎ破る」と言い、良い仕事とはされていません。しかし、作者は研ぎ破りによって浮き出る模様に着目し制作を始めました。この模様を活かす様々な素材表現を模索し最終的には漆を使った道具の原点である漆器に落とし込むようになり、当初は器として使うことを想定していたが、より効果的に魅せる方法として手に納まるモノから空間へと目を向けるようになりました。
本作品は木材から徐々に成長して芽吹いた様な器の形状とそれに合わせた漆の加飾に作者の着眼点とセンスを感じることができます。また、リズミカルに配置された様子は漆器の領域を超えて空間演出としても漆の魅力を伝える作品となりました。緻密に研ぎ上げた漆の仕事と感覚的に削り出された木の仕事から作者の繊細な性格と大胆な行動力が見て取れます。