学校法人トキワ松学園 横浜美術大学 Graduation Exhibition Archives 卒業制作アーカイブ

彫刻

赤坂 康晴Akasaka, Yasuharu

2021最優秀賞
七日目の蝉は何を想う

楠、アクリル絵具

65×165×60cm

教員コメント伊藤 幸久 准教授

七日目の蝉は何を想い、何をするのだろうか。
作者は、コロナ禍ゆえに病院に入院中の祖母に会えぬまま別れを迎えることになった。
亡き祖母を憂い、病床の祖母の様子やその時の想いを想像し、本作を作り上げた。

本作の下部に配された大きな人の手。その手首から伸びる点滴のような管を上へと辿ると植物のような何かであることが分かる。冬虫夏草である。冬虫夏草のてっぺんには蝉の成虫が留まっており、下へ目を向けると蝉の抜け殻が転がっている。

手首から伸びる管には栄養が送られているようであり、逆に冬虫夏草が手首から栄養を吸い取るようでもある。また、七日目の蝉が死を連想させる一方で、蝉の抜け殻は誕生や再生を連想させる。相反するイメージを盛り込むことで、作者は死と再生の表現を試みている。

本作は、複雑な形状のモチーフを複数構成した難易度の高いイメージであるが、寄せ木作りを始めとした、作者の巧みな木彫技術と構成力により見事に木彫作品として完成させている。
制作時間に限りがある中で、作品の一部を自宅に持ち帰り木彫制作を行うなど、高いモチベーションを持って制作と向き合った。そのことが作品の質に大きく貢献した点も高く評価したい。