
修復保存
論文
書籍
30×21.2×3cm
13×18.3×9cm
13.8×18.5×2.3cm
4点
粘着テープによって修理された書籍3冊の修復
本研究は、書籍修復の現場において頻繁に用いられてきた粘着テープに着目し、その劣化特性と除去処置を素材別の適合性を踏まえて検証するものである。実際にテープで修理された複数の書籍を対象に、修復前調査および除去処置を実践し、テープが書籍の保存性や使用性に及ぼす影響を明らかにした。さらに、資料の状態や用途に応じて、テープを除去しない、あるいは使用を許容する判断も含め、粘着テープを修復における一つの手段として位置づけ、その使用のあり方について考察した。
印刷参考文例集
本資料は、紙問屋より納品された文例集であり、主に会社や商店主が使用することを想定した、はがきや各種カード類に印刷する文例が収録している。表紙は全体的に摩耗やほつれが認められ、溝部分から分離しかけていた。過去の補修として布粘着テープが使用されているが、粘着剤の劣化により接着力は低下している。本文および見返し紙には変色や脆弱化、折れ、破れ、欠損が見られる。今後の利用がないので見た目を整えることを目的として修復を行った。
常用熟語 倭古印體千字文 改訂版
本資料は、常用熟語の読み方と使用漢字を、楷書および倭古印体の二種の書体で示した資料である。製本は針金を用いた平綴じで、針金には錆の発生が認められる。表紙が分離しており、折れや破れがみられ、欠損や染みが全体に多く認められる。紙の脆弱化は全体的に進行しており、破れ箇所にメンディングテープによる補修が確認された。今後も利用される資料であるため構造的強度の回復および使用時の妨げを解消することを目的 として修復を行った。
当用漢字 篆書字典
本資料は、当用漢字を対象に、読みや形を楷書で示すとともに、大篆よりも判読しやすい小篆、さらに印象用に作られた印篆を併記した篆書字典である。ブックカバーは両面テープにより直接貼付されおり、のど部分の分離や紙の破れが認められる。破れ箇所にはセロハンテープやメンディングテープによる補修が確認され、黄変や剥離、染みの発生もみられえた。挟み込み資料や鉛筆の書き込みも確認される。本資料は今後も利用されるため、構造的強度の回復と使用時の支障解消を目的として修復を行なった。
今回の修復は、学生のご家族が使用している損傷のある3冊の本を、今よりも使いやすく利用できるように行われたものです。
3冊すべてに粘着テープが貼られているうえに、表紙のゆるみや綴じ金具の劣化が見られる書籍もありました。
劣化した粘着テープを剥がすために、テープの種類とテープの貼られたページの素材を調査、劣化サンプルの作成し、テープの除去方法を検討しながら、修復処置内容を決定するという地道な工程を誠実、丁寧に行なったことは高く評価される点と言えます。
本の修復にとって、外的な美観に配慮することも大切である一方、利用者の使用に耐え得る状態への処置が求められます。
そのため製本構造を理解した上で、損傷個所に適切な素材を使用し、処置を行わなければなりません。当該学生は、1年を通して形態が異なる3冊それぞれに必要な処置を行い、適切な修復を完了することができました。
以上について高く評価するものです。