学校法人トキワ松学園 横浜美術大学 Graduation Exhibition Archives 卒業制作アーカイブ

絵画

上野 千夏Ueno, Chinatsu

2022最優秀賞
塩の管制塔
ドミノの放送

油彩

162×260.6×3.5

2点

教員コメント北澤 茂夫 教授

作者は、一貫して夢から触発されたイメージを描いてきた。これまでは、目覚めの瞬間や眠れない夜、白昼夢のような茫漠として不条理を感じる世界を詩的に表現して見事な作品を生み出した。この卒制作品では、空港が物語の舞台であり装置として使われている。空港は新たな旅の始まりであり、地上に残る者との別れを象徴するだろう。
黄色を基調とする「ドミノの館内放送(搭乗通路にて)」では、羊を従えて俯き加減の男が、搭乗しようとする風船を持った子どもの後ろ姿を見ている。この子はどこに旅立とうとしているのか?この子は男の子どもだろうか?それとも子ども時代の自分との別れを象徴しているのだろうか?夕日の黄色い斜光が二人に注がれ、郷愁や人生をも感じさせる。
青を基調とする「塩の管制塔(展望台デッキにて)」では、羊を従えた男が旅客機と空港の建物を見つめており、濡れた駐機場には光が反射し遠くの空は雨に烟っている。男は何を見つめ何を思っているのか?別れた子供は誰なのか、と再び考えを巡らすのだが、答えは得られない。
説明を排し夢と現実の狭間を感じさせる表現が見るものを惹きつける。作品の前に立つと様々な想像や解釈を迫ってくるのだが、それが作品の持つ力であることは言うまでもない。