絵画
油彩、キャンバス
194×130.3cm×3点
227.3×162.1cm
作者は作品について、テーマは「内側の自分、外側の気配」であり、それを実現するためのコンセプトとして「穏やかな午後の室内の思い出」「口数の少ない消極的で物静かな画面」「作品が展示される空間の壁に穴を開けて空気と光を通すインテリア」を立てて制作した。また「内から外を眺める自分自身の閉塞への安堵・外側への憧憬を自覚したことがこのテーマでの作品制作のきっかけである」と書いている。
人の性格を言う時に「外向性」「内向性」という言葉があるが、この作者は内への志向を持ち、内面に沈潜することの安堵と共に外の世界を求める気持ちも同時に持ち合わせるアンビバレントな状態にある。このような傾向は、これから社会に出て行こうとする若者には特に珍しいことではないが、それを絵画的に表現することは非常に難しい。安易に描くと説明的になりがちなのを、巧みな明暗と色彩を用いて室内に届く柔らかな外光を描くことで、心理的・哲学的なテーマを見事に表現している。優れた感性と造形力を感じさせる作品である。