テキスタイルデザイン
着物/友禅
布(絹)、酸性染料
178×101cm
2点
タイトルの「面影」は、記憶により心に思い浮かべる顔や姿という意味があります。私が実際にみた景色から浮かんだ動物たちを描きました。登場する猫、うさぎ、鳥はどこからやってきたのか?どこに向かうのか?見る人にストーリーを想像してもらいたいというコンセプトです。着物は着るものでありながらも、作品としての魅力を伝えたいと思い制作しました。友禅技法を選んだ理由は、幾つもの複雑な工程を、時間をかけて丁寧に手作業で行なっていくところに惹かれたからです。
左の作品は、ブーゲンビリアの鮮やかさを活かしながら自然のぬくもりが感じられるような配色を工夫しました。右の作品は、下から見上げたホオノキを描いています。重なった葉の部分に色を重ねることにより透けて見えるように表現しました。動物達は影のように見せたいと思い、シルエットで描いています。見る人の心に柔らかく残るような作品になれたら幸いです。
「ブーゲンビリア」の作品は、ポイントになる位置に配置した花の丁寧な濃淡のぼかし技法や、葉の挿し色に変化を加えることにより強調された糸目(いとめ)(友禅技法:模様の輪郭の細い線)が見せ場となっています。シルエットで表現された動物達も地染めの後の堰出し(せきだし)(友禅技法:輪郭線のない仕上がり)技法により、地色に自然に馴染んでおり、伝統技法である友禅ならではの技法が活かされています。「ホウノキ」の作品は、重なり合ったホウの葉が光に透ける様に堰出し(せきだし)技法による透明感が表されており、部分的に見える糸目の線と心地よく調和しています。どちらの作品も、地染めにムラがなく均一に染め上げられている点も技術的に優れている点です。何よりも、見る人にストーリーを委ねながら、優しく語りかけてくれる心温まる作品だと言えるでしょう。