勉学や仕事などに対し、辛さや苦しさを感じ、やめたいけれどやめる勇気のない自分自身へ向けた作品です。人生をやめてしまわない限り、どんなことでもやめていいということを、イラストレーションで表現しました。絵の中では、自分に見立てたキャラクターが飛行機に搭乗しており、同じ時間軸を生きる中でやめたいことをやめ、自由に生きている自分を表現しています。

近年のイラストレーションはデジタルが主流となり、またAIの登場により取り巻く状況も刻々と変化している。そのようななか、若いクリエイターのアナログへの再評価やオリジナルな表現への希求が起きている。
高杉さんは２年次に砂絵の技法研究を始め、その後の課題制作を通じ、様々な方法で試行錯誤してきた。その成果を卒業制作で存分に活かし大型の作品を制作した。デジタルの１ピクセルの色が混合して複雑な色を生み出すように、砂１粒の色の混合によって豊かな色彩が生み出された砂絵技法は高杉さんの３年間の研究の賜物でもあり、独自の優れた表現となって結実した。
　この作品では社会から管理されていると感じ、押しつぶされそうな現代人の状況を、人生の幾つかのタームー児童・修学・就職・老いーをコミカルで愛らしいキャラクターたちを用いて描いた。老いた彼らの上を飛行機に乗り飛び越えていくキャラクターがいる。人生のいくつかの場面で彼は自身の持ち物を置き捨て次へ進んでいく。その飄々とした姿は多くの人々への救いのメッセージであり、彼女の祈りでもある。