デジタルツールで描かれた少年少女たちは皆どこか憂いを帯びた表情をしています。作者が今まで経験してきた過程にはあの東日本大震災があり、そして世界規模のバンデミック、ウクライナ情勢が引き起こした世界経済の不安・・・と、大人でも受け止めるには重い出来事が数多くありました。そのような不安定な社会情勢の中で、感受性の豊かな作者が感じ取っているなにかをこの作品を通じて私たちに訴えかけてくるようです。こちらをじっと見つめ返してくる少女や、思案する少年たちの表情にはどこかゆらぎを感じます。それでも未来を生きようとする彼らには高潔で毅然とした精神性を感じます。
デジタルツールを用いた表現ではともするとアプリの特性に頼りがちになり、タッチが単調になりがちですが、作者はデジタルツールを用いながらもアナログ的な大胆な筆致を残し、勢いのある表現をしています。大きく引き伸ばしたときにその特性はより効果的に際立ちます。