クラフト
木工
クルミ、MDF
200×250×150cm
中世後期に西ヨーロッパの建造物などでみられるゴシック様式に作者は興味を持ちデザインや歴史的背景を参考に象徴的存在をテーマとした椅子を制作しました。ゴシック様式の代表的な建物として記憶に新しい2019年フランスのパリで火災被害にあった世界遺産のノートルダム大聖堂が挙げられます。作者は幼少の頃に実際に見たノートルダム大聖堂の装飾やフォルムに子供ながら圧倒され今もその景色が心の中に刻まれていました。
作品に目を向けてみると椅子としての用途は保ちながら全体を余すことなくデコラティブに彫刻された幾何学模様の柱や背もたれなどの緻密さと手数に圧倒されます。背もたれの向日葵のレリーフの根は力強さも有りながら花が枯れていく様子が刻まれています。養分を使い切り生涯の役目を終える瞬間なのか、若くはエネルギッシュな装飾に寄生して復活を遂げるのか。微動だにしない椅子からは不気味で不安定なストーリーを漂わせます。真っ赤な台座に椅子を鎮座させることで作品と鑑賞者との間合いを図り近くにあるが手に届かない象徴的存在としての印象を与えています。
この作品は作者が幼少の時に圧倒された感覚に近いものを再確認するために存在する作品だと私は気づかされました。皆さんにも幼少の頃の衝撃的な思い出は心の片隅にあるのではないでしょうか。