絵画
水性アルキド絵具、油彩、キャンバス
181.8×227.3cm
2点
作者は3年次よりアクリル板などの透明な物体への反射(2次元)とその向こうに存在する3次元空間の多重イメージへの関心を基に作品を制作してきた。その上で卒制にあたり、「人は世界を三次元空間と認識する。一方で、一つの目で一度に受容できる情報は二次元の画像であり、三次元の情報の受け渡しは主に二次元画像を用いて行われる。・・・よく考えてみると不思議である」ことに着目した。作品制作にあたっては、「立方体を3次元空間に配置し、それを2次元の画面上に投影して表現する」という複雑な過程を経て制作されている。また「立方体同士が交差した時に出来る複雑な形に注目」し、その位置・角度・大きさはスプレッドシート上での計算により導き出している。2点の作品は一点透視図の鏡像の関係にあり、2次元では決して重なり合わないが3次元空間では容易に重ね合わせることが出来る、とも述べる。
仮想3次元空間に立方体が交錯するように配置されているのだが、この知的で緻密な論理と計算により、画面には複雑な構成でありながら美的秩序が生み出されている。作者の科学的な思考により、2次元と3次元空間の不思議な関係を絵画化した秀作である。