総尺13分に及ぶドローイングアニメーションを軸にしたインスタレーション作品である。
18世紀のフランスを舞台とした「愛」がテーマの物語であり、複雑な主人公の心情、状況をストーリーテラーを用いることでわかりやすく、かつ物語に深く引き込むことを可能にした秀逸な構成となっている。吸血鬼伝説や時代背景、地域性を十分研究した上で練りに練って書かれた脚本は見る者を納得させる力がある。また、法則性を持ってデザインされた独自の文字や言語が独特な世界観を醸し出すのに一役かっている。マルチプレーン技法を用いたアナログな動きもこの作品の見どころの一つであり、個性となっている。最終的な作品形態をインスタレーションとし、プロジェクターによって上映するアニメーション、原画、設定資料などを、劇場でありアトリエでもある空間としてまとめ上げた。作者の高い造形力と表現力が発揮された非常に奥深い世界観を持った作品である。