修復保存
論文119頁
29.7×21 cm
29.7×21 cm
本研究は、イラストレーションコースから修復保存コースへとコース変更した学⽣が、 ⾃⾝にとって⾝近な画材と、その劣化現象という研究テーマを⾒いだし、粘り強く実験を重ね、その結果を論⽂、展⽰へと結びつけた好例である。
研究対象のアルコールマーカーは、現在多くのアーティストに使⽤されている画材であるにもかかわらず、照明による退⾊に関する研究は発展途上であり、未だ資料も⼗分であるとは⾔い難い。
また、実験を正しく⾏うためには、光の波⻑や照明器具から、作品展⽰における照明基準値、さらにはアルコールマーカーが有する性質まで、多岐わたる深い理解を必要とする。
彼⼥は常に「なぜ?」という真っ直ぐな探究⼼を持ち続け、専⾨書や担当教員から得た知識を積み重ね、緻密な退⾊実験を⾏うことで、現在の照明基準とは若⼲異なる貴重な実験結果を得ることに成功している。
今般の研究結果は、当該画材により作品制作するアーティストのみならず、作品展⽰に関わる学芸員等とっても、⾮常に有益且つ実践的な内容であった。
また、基準値遵守に拘泥することなく、作品保存における基本事項である「個々の作品状態観察」という重要性を再確認させた点からも⾼く評価するものである。