写真
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47x60cmx12点
中国では1979年以来2013年頃まで一人っ子政策が続き、若者の多くが兄弟がいません。作者にとって近しい存在は両親と4人の祖父母なのです。学校へ行けば友達と呼べる者はいるが、彼ら彼女たちも皆一人っ子で、近親に感じられる関係にはなかなかなれないクラスメイトたちなのです。日本へ留学しても作者には、その疎外感はさらに続き、前作《アウトロー》では、その象徴的作品でありました。街を一人称の視点で孤独に歩く200枚ほどのスナップ写真で構成されていたのです。卒業制作では、作者にとっては等価である中国の身辺の風景と日本の身辺の風景を主観的な眼差しで傍観し、ビルや街路樹、公園や街並み、見知らぬ人々をクールに撮影しているのです。この視点は、中国の若者の実存主義と見受けられるのです。撮影された膨大な写真の人影はどれも後ろ姿で、作者と目を合わせようとしません。何処へ行っても居心地の悪さと疎外感が拭え切れない。この感覚はまさに現代の中国の若者たちの実存、《わたしは》なのであると感じるのです。