学校法人トキワ松学園 横浜美術大学 Graduation Exhibition Archives 卒業制作アーカイブ

絵画

安藤 由莉Yuri Ando

2019優秀賞
人工物と自然物の中間地点

ミクストメディア

可変

教員コメント北澤茂夫 教授

安藤さんは、これまで一貫して、朽ちて失われようとしている建物への哀切感を独自の柔らかい感性で表現してきました。作品に描かれるのは、人々の生活の歴史を刻みながら、今は住む人も無くなり役目を終えようとしている建物です。
彼女は「生命を宿さない作り物の行方が気になる・・・」と言い、「誰もいない空間に確かに、生活の痕跡が残っており、瓦礫と瓦礫の間に生きていた人の影を見た」と言います。人々から忘れられた時、その建物は急速に朽ちていきます。さらに「人工物の死とは何であろうか」と問い「生命が宿れずとも、そこにはある種生命体である人間と同じ運命が宿っているのではないか?」と自問します。それは、廃墟に人生を見、自身の存在も重ねる哲学的な問いです。
安藤さんは、これら人工物を今にも失われそうな儚い存在として描くことで、人間の命も同じであることを象徴的に表現しています。それはまるで、コロナ禍で命の危うさと儚さに気づくことになる、私たちの今を予言しているようにも思えるのです。