クラフト
木工
55x194x55cm
クジラとその周りに寄り添う小魚達が海中を「持ちつ持たれつ」の関係で泳ぐ様をモチーフとした、パブリックスペースを想定したベンチである。
動的な瞬間を切り取った彫刻作品のような趣がありながら、座る機能を持たせるためにデフォルメ化されたデザイン、素材を活かした表現力、ディテールの仕上がりがクラフト的価値を見い出し高評価を得た。
素材は胡桃の無垢材を使用して何層にも積み重ね、大きな塊を作ることから始まる。積層した木の塊を刃物で削り出して成形することで、木目が複雑に表面に浮き出て見える。実際にクジラを観察すると肌は無数に傷がある事を確認できるのだが、この木目が大海原を回遊してきたクジラを連想する視覚的効果をもたらしている。スリットが入っている腹部には、使用に十分耐えうる構造を保ちながら、クジラが作り出す海流と寄り添う小魚達がちらりと顔を覗かせるユニークな作品である。